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選択するための指針

第13回産業論文コンクール 努力賞
株式会社ヒラノテクシード  石橋光史 氏

 

 自分の選択を正解にしていく。これは私が社会人になるにあたって心に決めたことである。学生から社会人に変わる人生の大きな節目において、今の会社に入ることを選んだ。自分を選んでいただいた会社でもある。自分自身も、自分を選んでくれた方々も、それぞれが本当に良い選択をしたと感じられるよう社会人として生きていこうと思った。これからの社会人生活においても、様々な選択を迫られることがあると思う。そんなとき、自分の決めたことを前向きに精一杯取り組んで、他の道を選んでおけばよかったと後悔することのないよう、自分の選択に責任を持ちたい。一度決めたことを最後まで貫き通すためにも、常に自分なりの軸となる考え方や哲学を持って、ひとつひとつの選択をしていく必要があると思う。
 現在、入社して約5ヶ月が経った。初めての長期出張に来ている。場所はアメリカ、期間は約1ヶ月。何もかもが初めてのことで、わからないことだらけである。その上、慣れない土地での生活である。疲労困憊の毎日だ。日本との食の違いや気候の違いに苦労している。辛さもあるが、普段はなかなか経験できないことだと思って、この生活環境もできるだけ楽しむようにしている。仕事現場では、目の前にあるほとんどのことが新しい情報であり、日々多くのことを吸収し、その情報を自分のものとして昇華していかなければならない。全ての情報を把握しきれない場合でも、少なくともなぜその工程を行なっているのかという目的を理解して携わるよう心掛けている。現場に来たことで、今まで以上に充実した経験ができていると思う。社内では図面上でしか想像できなかったものが、実際に機械の現物と図面を照らし合わすことができる。実際に機械が動く様子も見ることができる。現場での業務を通して、どういう仕組みで機械が動かされるのか、より具体的に理解できるようになった。そして、現場にて特に難しいと感じたことは、不具合が起こったときの対処である。不具合に対して、その原因と考えられることをひとつずつ確認していく。配線が間違っているのか、機器自体が破損しているのか、外部からのノイズによる影響かなど、あらゆる原因を順番に調べていき、ひとつずつその原因が起こる可能性を潰していくことが大事だということを学んだ。しかし、原因を探るにあたって、図面やプログラムの読み方、機器に関する知識、機械全体を把握して考えることなど、まだまだ私には必要な知識や能力が足りないことを実感している。こうした新たな経験ができているのも、自分なりの指針があったからだと思う。
 数ヶ月前に、課長から海外の長期出張に行ってもらうことになるかもしれないという話を頂いた。そのとき、私は即断して「是非行きたい。」と返答した。国内以上に過酷であろう海外の長期出張でも、自分が成長できる機会を手に入れたいと思ったためである。自分の返答が、出張が決まったあまり大きな理由ではないかもしれない。しかし、自分の声を相手に示していくことで、貴重な機会を得られることが必ず増えていくと思う。
 自分が成長できる機会を増やすために、私はひとつ決め事をしている。それは、自分が挑戦できる場面があるのなら、後先考えずにとりあえずイエスと答えることである。仕事において、自分には少し手に負えなさそうな仕事を頼まれても引き受けてみる。自分の業務とは直接関係のなさそうな講習会にも参加してみる。今までの私は、自分がやれると思ったことしかやらない傾向にあったと思う。何かを始める前にあれこれと悩み想像して、結局やらずに過ごしてしまうことがあった。仕事においても、私生活においても、自分の得手不得手に関わらず失敗を恐れず挑戦していきたい。その経験がいつかどこかの場面できっと生きてくることがあるはずである。失敗しても、少々他の人に迷惑が掛かるくらいである。たとえ、人に迷惑を掛けても恨みを買わなければ問題ない。もちろん人に迷惑を掛けたい訳ではないが、これくらい前向きに考えて何事にも取り組んでいきたい。何に対しても頭で迷う前にまずはやってみる。これも私の指針である。
 他にも、私は念頭に置くようにしている指針がある。それは、三方よしという考え方である。三方よしとは、近江商人の言葉であり、買い手よし・売り手よし・世間よしという三方よしの精神である。お客様に喜んでもらい、自身の利益も忘れず、その上で世の中がよくなることを行なっていくという考え方だと思う。近江商人は三方にとってよい商品を提供し続けて、周りからの信頼を得て活躍したのである。私はこの言葉を、相手よし・自分よし・周囲よしと置き換えて考えるようにしている。例えば、仕事の進め方においても、相手が満足のいく仕事・相手の負担を和らげられる仕事ができているか、その仕事の進め方に対して自分も納得できているか、その結果、周囲、ひいては自社に良い影響を与えられるかということを意識するようにしている。選択に迷ったとき、三方よしの考えに立ち返って、どれかひとつの「よし」も欠けることなく、三方いずれも最大限の「よし」となるような選択をするよう心掛けたい。
 現在の私は以上のような考えを持って仕事をしている。自分にとってよい選択をし、その選択に責任を持って取り組めるよう、自分がなぜその選択をするのかということを大事にしていきたい。これからも様々な選択の場面が訪れると思うが、自分なりの指針を持って、ひとつひとつの選択を行ない、自信を持って選択した道を突き進みたい。

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