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身近に感じたグローバル化

第13回産業論文コンクール 努力賞
三笠産業株式会社  植田大輝 氏

 

 先日、出張からの帰りの電車の中で駅名の映ったスマホをこちらに見せながら「この電車は近鉄奈良行きか」と東アジア系の旅行者の方から英語で質問を受けた。「YES」とでも言えれば良かったのであろうが、咄嗟のことでその時は頷いて答えることしかできなかった。ここ数年、テレビや新聞等様々なところで、グローバル化について見聞きすることがある。町を歩いていても自分が高校生であった十数年前にくらべ格段に外国人の方が歩いているのを目にする機会が増えた。そうした中で、先日の出来事は自分にとってグローバル化を身近に感じた出来事であった。
 今後、日本の人口は2050年ごろに1億人を切り、2065年には8800万人ぐらいまで減少するとの人口推計(1)がある。日本の人口は2015年をピークにこれからもどんどん減少していく。そうした社会的局面においてさらなる発展を求める方法の一つとして、海外進出が挙げられる。当社もタイに製造と販売の拠点をもち、海外への販路を広げようとしている途上である。私は現在海外市場向けの製品の立ち上げを2件担当し、仕事の上でも海外とのつながりを感じている。
 ここで、当社と私が配属された部署のことについて触れておく。当社は主に食品調味料用キャップやペットボトルの開発・製造・販売を行っている。私は技術部門の1つである成形技術部に所属している。成形技術部は開発が作った試作品の量産型の発注や試作を行い、金型を量産できるようにして工場へ引き渡すところまでを行う部署である。当社のキャップは射出成形によって作られる。射出成形とは加熱筒の中で溶かした樹脂を金型内に射出し、冷却・固化させて成形品を作る方法である。海外向け製品について金型や成形の面での特徴は、とにかく成形サイクルを速くしなければならないという点である。海外向け製品は製品単価が安いため、短い時間で多くの製品を作りコストを下げなければならない。ここが海外向けと国内向けとの大きな違いであり、難しい点の一つである。
 海外(アジア圏)向けに販売することを考えると海外の安いキャップと競争しなければならない。日本では液切れ性や漏れに関して非常にシビアであり、1つのキャップに多くの機能が持たせてある。キャップに多くの機能を持たせると製品が複雑になり、金型のコストやキャップ製造の難易度が上昇する。海外向けで多くの機能を求めないのであれば、出来る限り簡素化し、簡単に作れる安いキャップとすればよい。しかし、それでは海外製の安いキャップとの差別化が難しく、日本品質とは何かについて考えさせられる。日本品質を維持するためには、機能面をあまり簡素化せず製品の品質を訴求していくことが必要なのかもしれない。将来的に市場として有望なアジア圏の生活水準が上昇してくれば、清潔かつ高機能なものを使用したいという欲求も高まってくるはずである。そうなると、現在日本で売られているような高機能な製品が求められてくると考えられる。その土地の状況やニーズにあわせた製品を届けることが重要ではないかと感じる。
 調味料用キャップの扱い方は国内でも老若男女によって異なる。例えばプルトップ式のキャップはリングの中に指を入れて開ける機構となっている。しかし、力の弱い子供やお年寄りの一部の方で過去に開栓できなかった経験があるとリングに箸を差し込んで開ける人もいるとのことである。これより、必ずしもこちらが求めている方法で開けてくれるとは限らないことがわかる。何かの組織に属していると「こう使うもの」や「こう考えるもの」と思い込み、そうするのが当たり前であると思ってしまうことがある。しかし、世の中には様々な考え方や身体的特徴をもった人がいるわけなので、固定観念に捕らわれるのは危険なことである。まして、海外を相手にするのであれば、さらに自分の中の常識を疑っていかなければならないのではないかと思う。
 私自身グローバル化を肌で感じる中、海外向けの製品に携わることができているのはとても刺激的でありがたいことである。金型や成形の面では高効率でものを作らなければならず難しい点も多い。製品面では国内でさえ様々な考え方や身体的特徴による様々な使い方がなされる。海外に行けば文化や慣習による考え方の違いにより、我々が予想もしないような使われ方がなされるかもしれない。今までどおりではいかないことが今後さらに出てくると考えられる。そうしたときに、自分の中の常識を疑ってかかり解決の糸口を見いだせていければと思う。十数年前に比べ海外を身近に感じられる今、海外との繋がりから自己の考え方や価値観を見つめ直していきたい。

参考文献

(1)  国立社会保障・人口問題研究所

http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_PressRelease.pdf

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