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「仕事」との向き合い方

第13回産業論文コンクール 優秀賞
東洋アルミニウム株式会社 新庄製造所  中川雄斗 氏

 

  私は、勉強することが嫌いでした。
 只、何となく、皆が進学するから「高校には行かなければならない」という思いで進学を決めました。進学先もその頃就職率が高かったという理由で工業高校を選びました。
 大した出来事もなく、平凡な高校生活を過ごし、気が付けば高校三年生になり、この時も将来の夢も就きたい仕事も特に無く、勉強は嫌いだから、生活していく為には仕事をし、お金を稼がなければならないと言う思いだけで丁度学校の先生から紹介を受けた今の会社を就職先に選びました。
 高校までは、親にお金を払ってもらい通っていましたが、これからは会社から給料をもらうことになる訳で、この学生時代と社会人との待遇のギャップで入社当初は、会社の人達とうまくやっていけるか、仕事を覚えられるかと非常に悩み、夜の寝つきが悪く何度も起きてしまったりしました。
 入社してすぐは、色々な講習会に参加しました。ある講習会で講師の方から「約100,000時間もある労働時間をどういう風に過ごしたい?」という問いかけがありました。私は、その問い掛けにすごく考えさせられました。今まで学生時代は、学校に行く事が嫌でも通うのが当たり前で、それと同じ様に仕事も“しなくてはならないのが当たり前”と単純に考えていたからです。するのが当たり前という単純な気持ちで、これから100,000時間もの物凄く長い時間を過ごすのは、嫌だと思いました
 そこで私は、仕事をどういう風に好きになるか、仕事とどう向き合っていくかについて考えました。
 そこで思いついたのが「誰とでもコミュニケーションをとる事」です。それが仕事を好きになる為に必要不可欠だと考えたからです
 しかし、昔から人見知りの私は、自分から話しかける勇気がありませんでした。そこで、いつもなら「はい」「いいえ」で終わらせてしまう会話に、なにか一つ返事を付け加えて会話をするように心掛けました。そうしていると、相手に疑問系で返すことで長く話せることに気がつきました。
 入社して3、4ヶ月が経ったある日、仕事を教わっていた上司から「最近の若者は、コミュニケーションをとりにくい人が多いけど、君は話しやすくて良かった。」と、言っていただきました。私はその時、自分がしていたことは正しかったのだと感じることが出来、達成感とうれしい気持ちでいっぱいになりました。
 5ヶ月が経った頃、製造所内全ての工場を実習が始まりました。全ての工場を実習する上では、もちろん仕事を覚えることも重要ですが、会う人の大半が初対面なので、ここはコミュニケーションをとるチャンスだと思いました。初めて会う人たちと会話の中に入ることが不安でしたが、どの職場も先輩・上司の方々は仲が良く、私にも気軽に話しかけてくれたので、とても話しやすい雰囲気で実習をすることができました。
 そして次は自分から積極的に話しかけてみようと思いました。 とは言うものの、コミュニケーションをとることが苦手な私にとってその一歩が中々切り出せず、何を話し出せばいいか分かりませんでした。
その時ふと高校時代の担任の先生の話を思い出しました。「その日の天気や気候の話は、いつでもできるから話題に困れば、天気の話をすればいいよ。」 です。
 その頃は、9月とはいえ、まだまだ暑い日が続いていましたので「今日も暑いですね。」この言葉が魔法の言葉のように思えました。 自分から話しかけるようになると、それまで少し感じていた先輩方との距離が縮まったように思えました。
 1ヶ月間の製造所内全ての工場実習を終えると、それまでいた会社とは、別のところにいるような感じがしました。 実習をする前まで、恐る恐る交わしていた「おはようございます」の挨拶が、はきはき交わせるようになっていました。その頃から、会社に行きたくないという思いがなくなり、逆に以前に青の人と話していたあの話はどうなったのだろうかと思い出し、会社に行くのが楽しみに思うようになりました。 あるとき先輩から、「イカ釣りに行かないか?」と釣りに誘われました。初めてのプライベートの誘いに嬉しくて、すぐに行きたいですと返事をしました。一つも道具を持っていなかった私に「気にしなくていいよ、貸してあげるから。」と声をかけてくれました。それから先輩方と、三重県の魚港に行きました。釣り初心者の私に、投げ方や竿の振り方まで優しく教えてくださいました。その時、こんなにいい先輩がいて、他の先輩も優しい人ばかりで、この会社に入社して良かったと、心から思いました。
 この会社に入社する前までは、「仕事は生活の為の手段」と考えていました。もちろんそういった側面もありますが、仕事の内容を何一つわからない、足手まといなはずの私に嫌な顔一つせず、当たり前のように優しく仕事を教えてくれ、ミスをしてもフォローしてくれる先輩方に、私の出来ることで何か先輩方の役に立ちたいと思います。
 それから出来ることは自分から進んでする様になり、「ありがとう」と言われることも増えました。
この会社に入社し、学生の頃想像していた仕事に対しての考えが180°変わったと言っても過言ではありません。気がつくと“しなければならない”という思いは“誰かの役に立ちたい”という思いに変わっていたのです。こんなに私を変ええてくれた、成長させてくれた会社、先輩方に感謝し、初心を忘れることなく1日でも早く先輩方に追い付けるよう努力し、生涯この会社で仕事をしたいと思います。

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