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求められる変化

14回産業論文コンクール 努力賞
 住江織物株式会社 奈良事業所  犬飼友昭 氏

 

「これからの企業・仕事を考える」~求められる変化~

 

 社会人になって4か月が経過した。就職という人生のひとつの節目を迎えた私は、初めての関西暮らしや人間関係等々、変化の多い日々を送っている。研修も明けたばかりで仕事もわからないことが多く、与えられた業務を日々こなす毎日で日々余裕がないように感じていたところ、今回このように自分自身を見つめなおす機会を得ることができた。4か月間の私について振り返ってみたところ、学生時代に先生にかけて頂いた言葉を思い出しながら自分に求められる変化として「学生からの変化」と「将来に向けての変化」について思うことがあったため述べる。
 学生時代からの変化について、大学・大学院時代の私の先生には「41日から君の立場は180度変わる。それを自覚して社会に出なさい」と言われた。当時の私は「授業料を払って研究をしていた立場からお給料を頂いて仕事をする立場に変わることを言っているのだ。それは心得ていたつもりだ」と感じていたが、勤め始めてからはもうひとつの意味に気づいた。それは企業の研究と大学の研究への姿勢の違いだった。大学・大学院での研究は、腰を据えてひとつひとつ懸念点を潰し、「なぜ」を追求する作業と手順が主であった。対して企業の研究は納期等の関係でいかに短い時間と少ない手間で最大限の結果を出せるかが鍵となり、スピード感のある研究開発が求められており、「なぜ」の解明は後回しの事もある。また、どこをゴールに設定するかも違う。大学・大学院ではそもそも明確なゴールが見えていなくて、そこに到達しなくても、あるいは別の結果を得たとしても、それがひとつの進め方の習得として価値を認められる。企業では商品化というゴールがはっきり見えていることが多く、如何にしてそこに到達するかが問われている。これに気づいたのは会議に出席した際の質疑応答の場で、質問される内容が過程への疑問ではなく結果でどう利益に影響するかに寄っていたからだった。これは大学と企業の目的が違うためどちらが良いという話にはならないのだが、4か月前まで学生をやっていた私は階段を二、三段とばして駆け上がっていくような企業のスピード感に戸惑うと同時に、利益を上げなければ意味がない故の責任のような重圧も存在すると感じた。また、開発スピードが速いということは自分ひとりでできることに限界があるということも感じている。たくさんの人と連携を取り仕事を分担しながら同時並行するマネジメント能力が大きく求められていると感じる。
 ではどうやって同時並行する能力を開発すればいいのだろうか。やはり経験を積むことが考えられるため、案件をいくつか持ってやるしかない状況に追い込まれる荒療治が一番近道かと思う。しかしながら入社したての人間が案件を複数持つことはリスクが非常に大きくなかなかさせてもらえないため、今持っている案件に対して質を高めるために手を広げて検討項目を増やし、どうしたらよりよい結果を出せるか考えることがこれから実践していけることだと考える。時には先輩社員にも業務をお願いしつつ、人へモノを頼むことに慣れていく必要がある。そして増えた仕事量を期間内に納めるためにスケジュール意識をしっかりと持つことがもうひとつ考えられた。今は先輩の業務を振り分けてもらう側にいるが、いずれは振り分ける側に立つためにも、漠然と日々の業務をこなすのではなくもっと効率良く進めるために自分と協力者、時間を考えながら仕事をしていければと思う。
 一方、将来に向けての変化についても考えたとき、私は危惧しなければならないことがあると感じた。競争力を高めなければならないことだ。私が生まれる前に比べて、今の世の中は情報の伝達速度・情報量が飛躍的に上がり、貪欲な人間たちは自ら世界最高の知に簡単に触れ、手に入れることができるようになった。高度情報化のもたらす影響はビジネスチャンスの増加だけでなく、優秀なライバル達と同じ土俵に立たされて競争をしなければならない重圧を私は恐れている。しかし恐れるだけでは何も始まらないため、競争力を高めるべく今の自分から変化が必要だ。今の私が目指すべき優秀な人間がどうあるべきか考えてみたところ、過去の栄光にかかわらず世の中の流れに沿わないモノ・コトを捨てる決断と新しいことを始められる人間だと考えた。「捨てる」について実際の事例で言えばダイワホールディングスの経営改革がその例で、伝統的な事業から新規事業まで将来性を判断し徹底的に合理化・社内外へのオープンな情報開示で企業内のあらゆる壁を壊し、組織改革を成し遂げた。また、「新しいことを始める」について影響を受けた例として、先日出席した講演会での国内アパレル業界のベンチャー企業を挙げる。他分野の大企業がアパレルに参入してくる流れに飲み込まれないように、使えるチャンスは最大限に活用するべく斬新な求人やアイディアの買い取り、果てはSNSによるマーケティング、社長のツイッターアカウントでネットアンケートをとるなど一般的な企業の常識では考えられない方法で貪欲に知識と利益を求める企業活動がとても印象に残っていた。
 私はこの新しいことを始められるモデルを目指してトレーニングを積もうと思う。私が実践できるのは、既存のプロセスに常に疑問を持って発見した短所の改善策を考え、考えた結果は意見として周りに発信し対抗意見があれば自分の考えの短所を補うように改めて考えなおすことが挙がる。情報を集め視野を広げてこそ「捨てる・始める」の決断力が養われていくのだと考えているからだ。それもむやみに情報を集めるのではなく、顧客の求めるものはなにかについて考えることが重要で、例えば私が実際に影響を受けたように講演会、展示会などで刺激を受け、考える経験の積み重ねが身になっていく。単純な驚きや違う意見との出会いが大切なため、精力的に参加することで実現できると考える。また、「捨てる・始める」の能力を磨くためにもいくつかの課題を進めていかなければならない。そのためには、組織の構造としてピラミッドをより小さなチームで分割し、チーム単位で「捨てる・始める」の選定と調整を進める繰り返しがトレーニングになり、今後に繋がると考える。
 なるべき将来像を見つめて、まずは顧客の求めるものへ意識をしっかりと向ける。声を上げて一石を投じ、小さな波紋を作りだし、いくつもの波紋から大きなうねりを生み出していくのが自身の変化の第一歩だと考える。

 

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