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マラソンから仕事を考える

14回産業論文コンクール 優秀賞
株式会社ヒラノテクシード  上垣隆徳 氏

 

マラソンから仕事を考える

 

 自分の趣味は何かと聞かれたときにパッと思いつくのは、私の場合マラソンである。
 学生時代に陸上競技部であったこともあるが、社会人になってから参加したマラソンボランティアが非常に刺激的であったため、それ以後色々と参加している。
  趣味はマラソンですと答えた後、必ずと言っていいほど「マラソンって何が楽しいの?」と聞かれる。確かにフルマラソンなどの長い距離を走るという事は、身体的に辛いことである。また楽しそうに見えない理由としては、目的もなくただただ走っているだけのように見られがちな点も関係しているように思う。しかし全てのランナーは自分の記録や或いは初完走といったように、レベルに違いはあれ、それぞれ目標を持って走っている。決して目標も無いまま走っている訳ではないのである。
 また、マラソン大会には多くのボランティア・スタッフが必要になる。給水所やゴールなどはもちろんのこと、コースを間違えないための誘導員や怪我などに備えた救助隊などである。そういう人達の支えがあって、初めてマラソンは走りきれるのである。またマラソンは一人で孤独に走っていると思われがちであるが、沿道で応援してくれる一般の方々も非常に多いため、案外楽しく走れたりするものである。(沿道からの応援が多いマラソン大会は、やはりランナーからも人気の大会となる)
 マラソンを完走しようと思った時に、シューズやウェアといった道具を揃えなかったり、長距離を走る練習をしなかったりなど、準備をしない人はあまりいないと思う。今自分がどれくらいのスピードで走れるのか、何時間ぐらい走れるのか、目標のペースと比べてどうなのかを事前に知っていないと、なかなか本番で目標をクリアできない。また本番に向けて体調を合わせないといけないし、毎日の食事に気をつかわないといけないことも多い。そういった様々な準備をして本番に臨むが、当日の天気や怪我といったアクシデントで、思ったようにレースが進まないことも多い。
 しかしどんな状態でも一歩一歩進んでいくと、いつかはゴールにたどり着くことができるのである。決して走りきることだけがマラソンではないと私は感じるのである。(もちろん時間制限という問題はつきまとうが) マラソンで感じた以上の点は、社会で仕事することにも通じているのではないかと思う。
 1つ目は目標の設定である。毎日ただ同じことを繰り返していると思いながらの仕事は、傍から見ても楽しそうには見えないだろうし、当の本人もそのように感じるだろう。それは目標も何もなく、辛そうに走っているだけのランナーと同じである。どんな小さな事でも毎年、毎月、毎週と時間を区切って、自分なりの目標を設定して仕事に取り組むと、仕事にもやりがいが出てくるように感じる。 
 2つ目は会社という存在、つまりは環境が整っていることに気が付くことである。仕事は一人では決してできるものではない。メーカーであれば、営業や設計、組立といった様々な部署の人達が関わりあって一つの製品が出来ていき、会社が利益をあげることができる。また製品に直接関わらない経理や総務といった部署の人たちがいるからこそ、日常の業務が上手く回っていくのである。自分の仕事だけを考えるのではなく、周りを見渡して自分と関わりあう人たちとしっかり協力していくことが、仕事を楽しく円滑に進める上で重要であると思う。
 3つ目はしっかりとした準備が必要であるという事である。今の業務の中で自分に足りているスキルと足りていないスキルは何なのか。足りていない部分を埋めるためには何をしていけばよいのか。仕事ばかりではなく、時には息抜きをして心身のバランスをとることも重要である。しかしいくらしっかりと準備をしても、長い会社生活の中では失敗をしてしまうことがある。そんな中でも決して立ち止まらずに、ミスの原因を考え同じ失敗を繰り返さないよう努力をしていくことが、結果的に一歩一歩進んでいくことに繋がり、目標を達成するために重要なことではないかと思う。 
 以上に述べたように、目標と環境と準備という3つの項目を意識して仕事に取り組むことが、マラソンを走りきる上でも、或いは社会人人生を走りきる上でも大事なことであると私は感じる。私にとっての社会人生活はまだまだ走り始めたばかりであり、苦しい部分も楽しい部分もこれから色々と経験してくことになるのだと思う。
 しかしどんな時でも後ろばかりを見るのではなく、しっかりとゴールを見据えて、私は歩んでいきたい。

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