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これからの採用活動を考える

第15回産業論文コンクール 努力賞
ニッタ株式株式会社  谷口恵理 氏

 

 『 これからの採用活動を考える 』

 

 近年、新卒採用は売り手市場が続いており、大学生が選考を受ける企業数は、年々減少している。今後も、少子化により、学生の確保は更に難しくなると予測されている。また、経団連が就活ルール(新卒一括採用制度)を廃止したことで、通年採用や、グローバル人材の採用も注目されており、今後の採用活動にも大きく影響が出てくることは、明らかである。そのような、企業の採用活動に大きな変革を伴う時代に、どうすれば学生に自分の会社について興味を持ってもらえるか、採用担当者なりに考えた。そこで、重要であると考えたことが二つある。
 一つ目は、学生の目線に立つ、ということである。これは、私が三年前に就職活動をするうえで経験したことが例として挙げられる。
 私は、学生時代に、将来やりたい仕事が見つけられずにいた。そのため、志望業界も絞れずにいた。世の中には企業が四百万社近くあり、学生の売り手市場が謳われていたが、「企業数は多いかもしれないが、先行する企業をどう選べばよいのか分からない。結局私はどこの企業にも採用してもらえないのではないか。」と、不安が募っていた。そんな時、企業から学生へ直接オファーをかける、逆求人サイトを見つけた。私は、「自分のことを、『うちの会社と合う』と評価してくれる企業があるかもしれない。」と思い、そのサイトに登録した。そこで出会ったのが、今の上司である採用担当者だった。上司の時代の就職活動は、企業から送られてくる葉書から、自分が選考を受ける企業を決めていた、と聞いている。今の学生は、葉書でもなく、パソコンでもなく、スマートフォンを片手に就職活動をする。就活サイトに登録し、そこから自分の就職希望情報に合っているとされる企業からの選考案内のメールが、一日に数十通も送られてくるのが普通なのである。しかし、その数十通ものメールの中で、自分にとって本当に魅力的な企業を見つけるのは難しく、逆求人サイトや、民間のキャリアセンターが新たに出現し、多様な就活ツールが存在している。今後も、新しい就活ツールが続々と出現すると考えられる。そのため、学生の就職活動のトレンドに敏感に反応していくことは、学生との接触機会を逃さないために、今後も重要になると考える。
 ただし、このような逆求人サイト等のツールを、ただ利用すれば良い訳ではない。採用担当者は、プレゼンテーションや、パンフレットのビジュアル面も意識していく必要があるのである。今の学生は、インスタグラム等のSNSで、見栄えの良い写真(インスタ映えと呼ぶ)を投稿したり、閲覧したりすることに慣れ親しんでいる。そのため、会社案内のパンフレットにおいても、良い文章が長文で書かれているより、一目で引き付けられる絵や、写真がある方が、何十社分ものパンフレットをもらう学生にとっては、読み進めやすいのである。プレゼンテーションにおいても、それは同様である。相手の環境や状況を理解した上で、そのニーズに沿ったものを知るためにアンテナを張っておくことは、採用活動という、流行に敏感な学生が対象となる活動において、重要なことである。
 二つ目は、採用担当者が、自分の言葉で自分の仕事を語れることである。これは、実体験もそうであるが、会社の同期や、後輩の声からも感じることである。私の会社は、BtoBのメーカーで、名の通っている企業ではない。取り扱う製品も多岐に渡るため、入社時は、何の製品があるのか、把握しきれないような企業である。そんな企業に入社した若手社員に、会社に興味を持った理由を聞くと、私を含め、多くの人が「採用担当者が印象的だったから」と答えるのである。現代は情報にあふれており、ホワイト企業・ブラック企業診断をするようなサイトもある。しかし、そんな情報化社会でも、学生自身が直接顔を見て、話を聞いた人の影響は大きいのである。学生時代に採用担当者として出会った上司の印象は、明るく、ユーモアがあり、活き活きと仕事をしている、という印象であった。「この人がこんなに楽しそうに働いている企業って、どんな企業なんだろう」と感じ、会社に興味を持った記憶がある。もちろん、「この人が魅力的だ」と感じるのは、個人差がある。しかし、製品のことも良く分からない会社で、少し疲れた雰囲気の人事が話をしていては、学生も不安になってしまう。「人事は、会社で一番強い人間を配置するべきだ、という人もいる。」と、上司に聞いたことがあったが、もっともなことだと感じる。自分の会社や仕事について、自分の経験から語れる人事は、ホームページだけでは分からない魅力を学生に伝えることが出来るからである。
 私は、人事に配属されてまだ半年しか経っていない。今はまだ、忙しい最中借りられてきた、「猫の手」くらいの働きしか出来ていない。これから様々な業務にあたるうえで、「猫の手」を、痒い所に手が届く「孫の手」に、最終的には、自分の仕事を、自分の経験から自信を持って語れるような採用担当者になれるように、日々業務に取り組みたい。 

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