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「社会人になる」という意味

第16回産業論文コンクール 努力賞

 光洋サーモシステム株式会社  岩城 慧 氏

 

「社会人になる」という意味

  私が社会人となったのは今年4月のこと。入社式の当日は、私の前途を祝福するかのように快晴……であったのは午前までのこと。午後からは横殴りの大雨であったことは今でも鮮明に覚えている。これまでの穏やかでぬくぬくとした学生時代の午前に別れを告げ、時に雨風に打たれるであろう社会にひるまず立ち向かって行くべしという天からの激励であろうか。
 そう、私は「社会人」となったのだ。研修中の身ではあるが給与から税金を納めている、労働人口の一員である。とはいえ、社会人の前に「立派な」あるいは「一人前の」という言葉を付け名乗ることができるようになるには、まだまだ不足が多いことも実感している。
ここは、いただいた辞令に倣い「見習」を頭につけるのが適切であろう。一日も早く「見習」の代わりに「一人前」の社会人となるためには何が必要かということを考えてみる。

「仕事とは、人の気持ちを考えることである」

 これは、入社日にわが社の社長にご講話を賜った際に、「仕事観」について語っていただいた時の言葉だ。この言葉から、社会人になる前と後の決定的な差とは何かということに気づくことができた。それは、行動における自分の立ち位置という点だ。学生時代、行動の中心は常に自分であった。対人関係では波長の合う、合わないという観点が許され、講義を受ける際も真面目に取り組むか否かは学生個人のやる気次第であった。仮に期末考査や卒業論文で所定の基準に達せずとも「困る」のは自分、場合によっては家族も含まれるだろうが基本的に被害は自分で完結する。
 一方社会人は自分本位という考え方では立ち行かなくなる。お客様や職場の上司、先輩方同僚、協力会社の方々など多くの人とつながっているため、自身の仕事が基準に満たないものであったならばそれは「自分が困る」のではなく「自分以外の方々に迷惑がかかる」ことになる。例えノルマが達成できたとしても、それが自分のことを優先し続けた結果得られた成果では「人の気持ちを考えた」仕事とは言えない。社内研修の中で度々登場する言葉の中に「後工程はお客様」というものがある。これは仕事を進めるうえで次の工程に作業を回す際の心構えについてのべたもので次の工程がやりやすくなるようにという「次の人のことを考えた」仕事の取り組み方である。
 私はこれまで自分のために勉強をし、自分が気の合うと感じた人と交友関係を築いてきた、自分中心の考えを、自分の行いが周囲に与える影響を意識して行動していかなくてはならないと強く感じている。そうすることで自分の仕事に対する責任感が生まれ、いただいた仕事を完遂できた時、達成感に具体性を持たせることができると考えている。
 学生の時からどう変わっていかなくてはならないかということに対する私なりの考えについて述べたため、次に、より成長するために必要なことについて私の考えを述べる。
 入社して1月あまりの間に数多くの社内研修の機会をいただいた。その中で研修中あるいは研修後の質問時間で
 「新入社員が身に着けておくべきもの」
 「新入社員に必須と思われる能力」
についてお話しいただくと講師を務めていただいた方々からいただいた言葉の中に共通していたものがあった。それは 「若いうちに例え失敗をしても様々なこと、大きなことにチャレンジしていく心」というものだった。
 この言葉には、私たちに対して「貪欲に成長する機会を作っていく」という心の在り方とそれを後押しするメッセージが込められていると私は考えた。大きなことにチャレンジするという経験からは苦労すること、協力することの意義、よりよい仕事の進め方と数えきれないほどの学びを得ることができるだろう。失敗から得られる教訓や後悔も、後の財産となるだろう。それに加え、大きなことに取り組もうとすれば、今の自分に足りないものを補うため、必死で自分から様々な知識を得るため勉強するはずだ。
「やれでやるよりやるでやれ」
 これは私の大学時代の恩師から賜った言葉であるが、自分から進んでやる勉強はやらされてやるそれよりもずっと効果があるという意味で、「若いうちに大きなことにチャレンジする」という言葉の意味について触れていただいた際、真っ先に思い出した言葉である。
 私はどちらかといえば変化やチャレンジに対して臆病な性分であると自覚している。なにかをはじめようとするときに自分の力の範囲内でできるかどうかを考え、少しでも自分のできる範囲を超えると思えば規模の縮小を検討してしまうのは私の悪癖である。しかし、私はこれから40年近く働き続けねばならない。「働く」という言葉は「人」が「動く」という意味で作られたわが国独自の国字である。40年を動き続けるためには今のうちから力をつけていかねばならない。そのためにも研修中の今からできる勉強をし、配属された後も学び続ける習慣作りがいま私にできることであると思う。そして、配属され仕事について理解を深めながら、失敗を恐れずに様々なことへチャレンジしていき成長していきたい。失敗から学ぶことができるということは、社会人になって早速経験しているのだから。入社式以降就寝前の天気予報の確認は私の日課である。

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