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入社2年目に思うこと

第19回産業論文コンクール   努力賞
 株式会社ヒラノテクシード  田中汰玖 氏 
 『 入社2年目に思うこと 』

 

私が入社以来属している部署は設計実務を行うのではなく、設計部のシステム運用・他の課の設計業務の補助がメインとなっている。実際の設計業務を経験せずに補助をすることになり、配属直後は業務内容が理解できないまま、ただ指示された通りに業務をこなすことも少なくなかった。現在も分からないことは依然として多くあるが、入社2年目になり、業務内容や仕事の進め方について自分なりの考えを持つようになった。私が仕事を進めるにあたり常に忘れず、意識したいと思っていることは以下の二つである。

1)何のための業務か常に意識し、忘れない

 業務を行う際に、目先のことにばかり目を奪われて最終的な目的を忘れてしまうことがしばしば起きる。

 例えば、私の業務の一つに「購入品の型式ルール書を作成する」というものがある。弊社は大型の機械を製造しているため、他社からネジ、モータ、ヒータなどの製品を購入することも多く、それらを機械に組み込んで製造している。これら購入品を手配する際、毎回販売メーカーに自分が欲しい製品の仕様を事細かく伝えるのはかなりの手間を要するため、特定の記号(型式)により購入品を特定できるようにしておくことで「設計者の手配の負担を減らすこと」を目的にルール書を作成している。販売メーカー側で型式を用意してくれていることも多いが、型式が用意されていない場合もある。この場合、何度か販売メーカーとやり取りを行い、弊社と販売メーカー間の型式を決める必要があるが、型式にどこまでの意味を持たせるかが問題になる。型式で購入品を特定できるようにすることばかりに気を取られ、製品の全ての仕様を型式に表現しようとしたことがあり、その結果型式ルール書が難解なものになり、手配をしようとした設計者から苦情が来たことがあった。型式ルール書を見直したところ、製品の仕様の一部が弊社では特に関係しない要素であり、その要素を省けばルール書が分かりやすくなることが分かった。私はこの時に、目先の「製品を特定できる型式にする」ことだけに注意が行っており、本来の「設計者の手配の負担を減らす」ことを忘れていたことに気づいた。最終的にルール書を利用する設計者のことを念頭に置きながら、製品の仕様の中で必要な要素は何か相談していれば難解なルール書になることはなかったはずである。学生時代の個人戦とは異なり、会社に属して働くことは団体戦であり、常に後工程のことを気にする必要がある。私はこの経験から、何のための業務かを常に意識し、最終的な目的を見失わないように心掛けることが必要であると感じた。

2)業務の最終目的はお客様に満足してもらうこと

 私の業務は社内のシステム運用・他部署の設計業務の補助がメインであるため、基本的に後工程には社内の人間がいる。しかしある業務では後工程がなく、直接社外のお客様と接することがあった。

昨年度弊社は地域交流活動の一環として市町村のイベントに参加することになった。イベント内容は小中学生に職業体験として簡易版3DCADを操作し自分の好きなモデルを作ってもらい、最終的に作成したモデルは印刷してプレゼントするというものであり、私は小中学生の補助をする担当者に選ばれた。そのイベントを企画するのは会社としても初めてであり、準備も含めて一から行う必要があった。3DCADは普段使用していたが、簡易版の3DCADは小中学生が直感的に操作できるようにコマンドが普段使用していたものとかなり異なっており、まず操作に慣れるのに苦労した。またメーカーの説明書なども見当たらなかったため、イベント当日に小中学生にコマンドを説明する為のマニュアルも作成する必要があったが、小中学生がどのレベルの内容まで理解できるのかが分からず、マニュアル作りも苦労した。それら準備を終え、イベント当日に臨んだが、当日は予想していたより小中学生の間で簡易版3DCADのコマンド理解に差が生じた。普段からパソコンを触り慣れており、モデルを手際良く作る子供も居れば、パソコン・マウスを一切触ったことがない子供も居るなど、パソコンに対する習熟度に差があった。また、子供の性格にも違いがあり、引っ込み事案でモデルにあまり手を加えない子供も居れば、あれもこれもとモデルに手を加える子供も居た。実際の社外のお客様(今回は子供達)の反応は、社内で想像するだけでは分からないことであった。しかし最終的な完成品の印刷物を渡す際には全ての子供が笑顔で受け取ってくれ、満足してくれたように感じた。いつも後工程の社内の人間の反応しか見ていなかったため、エンドユーザーであるお客様に喜んでもらえたことを実感できた貴重な経験であった。

上記が社会人を一年以上経験して忘れないでおきたいと思った二点である。常に何のための業務か意識し、最終的な目的はお客様に満足してもらうこと、これらを念頭に置いて今後も日々の業務に取り組んでいきたい。

 







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