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”完璧”の落とし穴

第19回産業論文コンクール   優秀賞
 ニッタ株式会社 奈良工場  塚口 綾 氏 
 『 ”完璧”の落とし穴 』

 

私が現在の部署に配属されてから、もうすぐ1年が経とうとしている。配属により新しい生活や人間関係、業務など、周囲のあらゆる環境が変化した。この変化に対応するためにこれまで試行錯誤を続けてきたが、それによって環境だけでなく自分の考えや認識も変わってきたと感じている。特に、『完璧に固執しなくなった』ことは大きな変化であると思う。

 私は、昔からいわゆる“完璧主義”のきらいがあった。慎重に考え、十分に準備して、じっくり確認しなければ前に進めなかった。些細なミスも許せず、上手くいかないと気分が沈んだ。それでも学生の間はある程度成果が出ており、学校側の指示に正しく従うため、むしろ褒められることの方が多かったと記憶している。しかし入社して、これまでの自分の考えは打ち砕かれた。社会人になると仕事は多岐に渡り、その多くに納期がある。また様々な人と連携して進める必要もあるため、学生の時のように「1人で時間をかけてじっくり」する余裕が無いのである。初めは大いに戸惑った。ただ何度も失敗したり、職場の方々を観察したりするうちに、ある2つの観点からむしろ「完璧に拘りすぎない」ことが重要であると思うようになった。その観点について、以下に述べていく。

 まず1つ目の観点は「仕事のスピードと成果」である。配属直後は、報告書1つを作成して指導員に確認してもらうまで、そして指摘いただいた点を修正するまでに数日かけることがあった。内容だけでなく、体裁や言葉遣いの1つ1つが気になってしまっていたからだ。またどう考察すべきか分からないことも、一定のレベルの答えを出さなければいけないと思い抱え込んでいた。だがある時、転機が訪れた。任された報告書の納期が短く、他の仕事もあるため作成に時間があまり割けないことがあったのだ。私は仕方なく、言葉遣いなどの細かいことは後回しにし、早めに報告書を形にしたが、時間をかけられなかったことで不安を感じていた。しかし最後の確認のため、見返して驚いた。なんと時間をかけたこれまでの報告書と比較して、完成度にあまり違いが無かったのだ。その後の指導員からの指摘も、特に多くはなかった。蓋を開けてみれば、短い時間でいつもと同レベルの報告書を作成できていたのだ。以上のことから、私は仕事において、「1人で仕上げようとすることは、逆に効率を下げること」であると学んだ。学生時代と異なり、仕事には正解というものがまずない。ましてや未熟な人間が完璧を目指して時間をかけても良くなりはしない。未熟なうちこそ、早めに周囲に協力を仰ぎ、アドバイスをもらうことが大切だと思う。

 2つ目の観点は「得手不得手」である。現在携わっている仕事では力仕事がいくつもある。しかし私は女性で力に自信があるわけでもないため、時間をかけてしまったり、男性の先輩に代わっていただいたりすることが多かった。このことに対して、配属直後は全ての業務を1人でこなしきれないことが辛く、情けなく感じていた。しかし例えば体を鍛えても会社の規定で男女が持てる荷物の重さが決まっているなど、何かしらの限度があることに気づき、考えを変えることにした。できないことを割り切り、「できることを伸ばして、ギブアンドテイクできるようになるべき」だと。私の所属する部署のメインの業務はベルトの開発・改良だが、ベルトを輪にするために用いる工具を扱っていたり、みなの業務効率を向上させるExcelファイルを作成していたりと男女にかかわらず様々な業務を行っている。学生の頃の専攻を活かす人がいれば、その業務の担当になってから勉強して今ではその分野において頼られる存在となった人もいる。私の大学の専攻は業務とはあまり関係がなく、職場の方々をサポートできるような特技もない。そのため、今後は与えられた業務に真剣に取組み、その中で自分が好きなことやできそうなことを常に探し続けていきたい。そして見つけた特技を継続して伸ばしていき、3年後5年後には今まで助けていただいた分、その特技で周囲を助けられるようになりたいと思っている。

 “完璧”という殻を破ったことは、業務の効率を向上させただけでなく、精神的な負担も軽減させた。また私生活においても「失敗してはいけない」という一種の強迫観念が薄まり、以前よりも自信をもって外出できるようになったと感じる。本論文の作成を通して、私は仕事が自己成長の機会を与えてくれるものだと改めて実感した。また同時に流れに身を任せているだけでは、何も得させてはもらえないものだとも考える。私はまだまだ未熟で今後も何度も壁にぶつかるだろうが、常に柔軟な思考を持ち、果敢にチャレンジしていくことで、周囲と頼り頼られるような関係性を築いていきたい。






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