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「ものづくり」と向かい合って

第2回産業論文コンクール 最優秀賞
(株)ヒガシモトキカイ 畑中 多恵子さん

「おはようございます」
朝の一声は寝ぼけた頭を仕事モードにONさせる。
毎朝の全社員が揃い行われる朝礼は習慣となったが、初出勤の日は圧倒され緊張が一気に高まったのを覚えている。
私が携わることになった産業の世界は他のサービス業や、代理店業とは明らかに業務の内容、会社の体制が異なる世界でした。
ストイックさと柔軟性が混在し多様な能力が必要とされ集結している様に感じる。
それ故私達新人に求められているものも、順応性や器用さだけではありませんでした。
時に真逆にあるものだと思う時さえあります。
「生み出す」「作り出す」と言う世界に入った私たちに、上司や先輩方は教えてもらうよりまず先に、知る事を自ら欲する気持ちを持つ事、解らない事に向かい合う姿勢を教育してくださった。
詰まるところ探求心こそ産業の源であるからだと思う。その上で創造力、集中力、向上心が高められ産業は発展していくのだと考えます。
長く続いた経済の低迷、「時代は変わった」と言われ続けて久しい。
私が社会人となった時すでに、今までの秩序や常識は破壊され新しい構造が模索され、歓迎される時代の後期であった。ある程度膿は出され、癌は排除、摘出された社会に入った私に目に見えて何が変わったのかを明確に感じ取る事は出来ませんでしたが、入社し2年経った今考えるのは、私達に、私達の近い将来に求められているものが違ったのだと思います。
「ものづくり」とは多くの困難、壁にぶつかる事が作業の大半を占めていると働き始めて感じた。そしてその壁は必ず打破しなければならないのが作り手の使命だと言う事も。
その時必要となるのはやはり「情熱」でしかありません。
「情熱」誰しもが持って社会に出ますが日々の中で萎え、失いかける脆い剣です。
常に情熱を保ち続ける方法こそ「知る事を欲する」気持ちだと私は考えます。
それは、私達が入社し、まず教わった事であります。
知る事で養われた知識は知恵と自信になり次々と現れる壁に立ち向かうエネルギーとなるエネルギーはより一層情熱を高める。このスパイラルが産業の要だと言える。
「時代は変わった」と言う言い回しで表される変化の実態は骨太の人材の育成と言うのが一つであったのでしょう。
この日本の産業には多くの尊敬される偉人がいる。産業の中で働く一人の者として先人達の富、名声、偉業は意識し、刺激の対象である。しかしまだまだ能力も経験も少ない私達に出来る事は少なく、犯す失敗は先輩方を青ざめさせてしまう。欠陥だらけで肩を落した私は上司の背に補い合う事が出来るのが会社だと云う事を感じた。「ものづくり」とは一人一人の力の集合で欠点を補えば一人の優れた才能は生かさせる。足りないものは補い、一人で出来る限られた時間と努力を二人、三人で会社全体で取組めば最高のものが作れると肌で感じた。
先人達の才能に到底及ばないが一人の短所を集結させれる会社が日本の産業を担うだと思います。
社会に出るのは海原にカヤックで出る様に感じ二の足を踏んだ事、初出勤の緊張、あれから様々な自分の中にある価値観が変わり、多くの常識を学んだ。社会の歯車として自分が役割を担えているかどうかは、自らの仕事に取組む姿勢であり、行動力だと考えます。そして、社会の歯車であっても「企業の単にひとつの歯車であらない」と言う意識が同じ会社で働く者同士を切磋琢磨させるのだとも考えます。
即戦力が必要な時代に何も持たない新人の採用は無の可能性、順応性が企業に必要だったと半尺者ではありますが述べさせていただく。
会社の理、創業者の持ち続けた大義名分、それらを受け継ぎ、守り続けていける人材として育て上げる事が会社の本意だったのでは。
「チェンジでなくシフト」この波が今様々な業種の企業の中で起こっているとメディアや紙面で感じる時がある。それはまさに、次世代が片鱗を覗かせた事を示している。
強い信念を持つ事、信頼し合う事、情熱を絶やさない事が経営者に対する敬意だと思い変わらず持ち続けていようと自分に誓う。
社会は創造した以上に大海原ではありましたが心細さや、不信感はもう微塵もありません。一人でなく社員全員で漕ぐオールは力強い。疲れた時は友人が手を添えてくれ、方向が歪めば一丸とんなって軌道修正、波に揺らされれば沈まぬ様体制を立て直す。
一人一人の力が必要とされているこの会社に私は今、人の温かさを感じています。
今日も私が働くこの会社には加工機械の音が響き、溶接の光が壁に反射する。より良いものを作り出す為に。

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