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社会人二年生

第4回産業論文コンクール 努力賞
共同精版印刷(株) 松浦 綾菜さん

社会人二年生になった。私は印刷会社の制作課に所属している。思い起こせば入社して色んな事があり、色んな事に気づいた。
入社してから一年本当に私は散々のミスを出した。すぐやり直せる小さなミスから、印刷が終わった後に気付き最早一人では解決できない大きなミスまで。
「こんなに私って何もできなかったのか」
半年前は自分の性格・能力に毎日絶望し、会社に行くのが嫌で嫌で仕方ない日々が続いた。しかし勿論、辞める訳には行かない。少しずつ少しずつ自分の癖や性格を把握して、それに合わせた改善案を作り出していった。
会社で自分が使っているパソコンがある。始めて見る人にはたいがい驚かれる。笑われた事もある。なぜならパソコンモニターの縁ギリギリまで付箋がびっしりと貼ってあるのだ。それにはこの一年間で習った仕事をする上での基礎中のルール、仕事で使用するソフトの注意点、過去自分が起こしたミス等が書いてある。私以外にもモニターに付箋を張り付けている人はいるが、私に比べるとそれはとても少ない。『私は基本を忘れやすい。』社会人になってから気づいた事のひとつである。なら忘れない為にはどうしたらいいか?答えは簡単だ。「忘れないように常に視界にいれておく。」
企業で「事故」というとどんな事故を連想するだろうか。工場だと機械に巻き込まれるだとか、薬品が爆発した等という人命にかかわるような”事故”ではないだろうか。しかし”人命にかかわらない事故”という事故もある。印刷会社は印刷事故というものがある。(無論どちらも発生してしまったら大事態であるしとても肝を冷やされる)
皆様も雑誌やチラシで「字が間違っている」「商品の写真がおかしい」等の”印刷事故”を見た事があると思う。そういう事故は(私が在籍している)制作課が引き起こす事故である。(※勿論、部署ごとに様々な事故が存在するが割愛させて頂く)。
制作課での工程はお客様から”印刷物”の説明を受け、”印刷物”を構成する(中に入る文章や画像の事である)のデータを頂き、作成、お客様に確認・修正等のやりとりを何回か交わし最後のやりとりで印刷許可を得て印刷される。印刷事故は(1)『”最後のやりとりで許可を頂いた印刷物”の内容と”実際印刷されてお客様の元に納められた印刷物”が少しでも異なっていた場合』(2)『誤字脱字等”印刷物”を見た第三者が”印刷物”から正しい情報を得られない内容のデータになっているにもかかわらずお客様も作成した本人もミスに気づかないまま印刷してしまう場合』の二種にわけられると思う。私は(1)のミスを数回やってしまったことがある。例えばデータを上書き保存するのを忘れたままプリンターで出力しお客様に渡してしまったりしたのだ。
そこで私は「プリンターで出力するときは一旦ソフトを綴じて開いてから」「印刷の機械に回すデータは一枚プリンターで出力し、お客様の印刷許可が出た見本と重ねる、また一文一文確認する。」等々の改善案を実行してみた。私は”うっかり”が多い』。ならば、どうしたらいいかというと「慎重になる」しかないのである。印刷事故を私はもう何度も起こしている。しかしこの改善方法を導入してから(一つ一つの仕事をそれなりに覚えて来たこともあるだろうが)印刷事故を起こしてはいない。常に慎重を心がけ二度と事故を起こさないようにしたいものである。「文字打ち」という仕事がある。お客様がパソコン・ワープロで作成され紙に出力されたもの及び手書きで書かれた原稿の中身を、こちらで印刷データを作成する時に使用出来るよう、パソコン上に入力する仕事である。他の仕事と比べ高度の技術を要する必要な仕事ではないが、いかんせん誤った文字を入力してしまったり誤変換をしてしまったりミスを出やすい仕事である。
自慢ではないが、私は「文字をパソコンに入力する」という行為が速い。小さい頃から自宅にパソコンがあったからだ。中学生の頃にはもうキーボードの文字配列を覚えてしまっていた。ただ私は「入力した文字を元の文章と見比べて入力ミスを確認する」という行為はとても遅い。結局の所「文字打ち」という仕事は他の人と比べるととても遅い。
何故こんなに「確認」行為に時間がかかるかというとそれは入力ミスが多いからである。
入社する前までは「キーボードで文字を入力」する行為の時、その内容はいつだって「自分の言葉」だけだった。自分のパソコンだから自然と自分がよく使用する単語を即変換出来るようにもなっている。とどのつまり「入力した文字を確認しなくてもちゃんと文字を打てる」という環境が整っていたのだ。
しかし会社で文字入力する文は全く違っていた。入力する文は「自分の文」ではないのだ。自分は変だと思う場所で句読点をいれたり、その人特有の言葉遣いを使用されたりする文が沢山ある。自分は存在すら知らなかった漢字で書かれる文章だってある。入社したての頃は文字のタイピングはそれなりに速かったが入力ミスが多かった。自分が楽な環境に慣れていたものだから「文字確認」作業をそこそこに怠っていたのだ。それは印刷データを作成する上で非常に使えないデータだった。何回も叱られた。
『私は慎重さがない』ならばどうすればいいか。「文字を一文字一文字何度もゆっくりと見る」入力後の文字を紙に出力し原稿と見比べ、文章の内容、単語の意味などは一切理解せずただ”文字”を見る。一文字ずつ確認すればその文字に×を付けていく。それを二回は必ず繰り返す。どんなに忙しくても時間を見付け確認する。するとタイプミスは大分減った。時間はかかるが後でタイプミスを発見し修正、そして他にもタイプミスが出ていないか逐一何度も確認を繰り返す方よりかは、結果的に言えばこの方法の方が早いのではないのかと思う。この方法をずっと続けていこうと私は思っている。
ただ、仕事の作業時間は早くてきぱきとこなそうと思っている。当たり前のことだが自分がその仕事にかかった作業時間分の給料は全て会社にコストとして反映される。自分がダラダラとすればするほどコストが上がる。会社からすればたまったものではない。
『できる限り正確に。工夫をこなしてきぱきと、しかし最後の確認はあわてず正確に』自分が仕事に向かうスタンスは常に”こう”でありたいと思う。
社会人二年目、当たり前だが少しは成長してほんの少しでも会社にとって「使える人間」に近づいたのかな、と思う。ただ、冒頭でも書いた通り一年目は本当にミスばかり起こして本当に上司を始め周りの方に大変迷惑を掛けてしまったと思う。しかし数え切れない程色々な事を教えて頂き、沢山の工夫・ヒントを暖かく与えてくださった。二年目になった今も時々ミスを出したりして「辞めたい」とくじけそうになることもあるが周囲の方々や会社から頂いた「恩恵」を恩返ししなければならないと思い今日も頑張ろうと思う。

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