ホーム > 産業論文コンクール > 過去の入賞論文 > 第4回産業論文コンクール(平成20年度) > 「ものづくり」に携わって

「ものづくり」に携わって

第4回産業論文コンクール 最優秀賞
住江織物(株) 秦 桃子さん

私は大学時代、工学部であったため学生時代から「ものづくり」という言葉はよく耳にしていた。耳にすることは多かったが、その言葉の意味に対して深く考えることはなかった。そのため「ものづくり」=「ものを作っている現場」というイメージを持っていた。しかし、「ものづくり」に関わってみるとこのイメージとは全く違ったイメージを持つようになった。
私が社会人になり、配属先での仕事は自動車のオプションマットの開発だった。仕事を通して、ものができていく様子を見ているうちに、「ものづくり」は多くの人がかかわっているなと感じるようになった。「ものづくり」において、最も大事なことは世間のニーズに合わせたものを作ることだと私は考えている。このニーズを知るためには多くの情報が必要になる。より良いものを作ろうと思うとできるだけ正確な多くの情報が必要だと思った。さらに、商品にたいしての知識を深めることもとても大切だと思うようになった。過去の商品のデータなどをもとに新しいものを作ることもあるからだ。しかし、これらの情報やデータを一人の力で集めるには限界がある。そこで、私が社会人になって1年目で最も身につけなければならないと思った能力はコミュニケーション能力と情報の管理能力さらには、商品や加工工程においての基礎知識である。
入社し、新入社員研修が終了して配属されてすぐは緊張から、なかなかまわりの人と話したりすることができなかった。さらに、専門用語や基礎的な知識など覚えることがたくさんあった。そのため、はじめの頃はまったくといっていいほど余裕がなく、せっかく教えてもらったこともなかなか覚えられずとまどうことがとても多かった。しかし、時間がたつにつれて、職場の環境にも慣れ、少しずつ商品についてのこともわかるようになってきた。また、自分は何がわからないのか、今は何をしているのかがわかるようになってきて、まわりの人とのコミュニケーションも取れるようになってきた。そうなると、同じ部署の人以外からもいろいろなことを教えてもらえるようになり、以前よりも商品についての知識や加工工程について深めていくことができるようになった。
新しいものを作っていくなかではたくさんの情報が入ってくる。例えば、今後どのような商品をつくっていくのかである。これは、今現在のニーズを知ることである程度の外観が見えてくる。現在、どのようなものが求められているのかということを知ることによりどのようなものつくるかが決まってくる。さらに、どのような目的でつくるのかなどである。とくに、試作においてはデザイン重視で行うものや物性試験の結果を重視して行うものがある。そのため、目的をよく理解していないと的外れなものができてしまうことがある。私は商品をつくるうえでの情報は、多ければ多いほどいいと思っていた。たくさんの情報があればそれだけ巾の広い商品を作ることができると思っていたからだ。正しい情報なら、たくさんあればあるほど参考になるが、情報が多いと混乱することも多くなってくる。例えば、試作品などにおいてはいくつかのデザイン案などがある。実際にどのデザインを用いたのか、どのような規格を採用して試作を作ったのかなどの正確な情報がないと先には進めることができない。このような状況では、(1)どのデザインで試作を進めているのか、(2)今後の加工工程は予定通りでよいのか、(3)規格変更などがないか、などの情報が必要になる。このときに、必要な情報だけを手元に残すことが一番大切なことだと思う。つまり、情報の整理である。新しい情報が入ったら、それ以前の情報は必要の無い部分は捨てていき常に更新していくことにより、変更などへの対処も効率よくすることができるようになる。
私のもとにいろいろな情報が入ってくるようになった当初は整理整頓がうまくできず、どれが新しくどれが古い情報かわからなくなることがよくあった。まとめているつもりでも、肝心な部分が抜けていたりすることが何度かあった。しかし、余裕のあるうちに今後必要になりそうな情報を、簡略化し今後の変更・追記に対応できるようにまとめるようにし時間のあるときに、必要な情報をできるだけ頭に入れるようにすることによって少しずつ情報の整理ができるようになってきた。
入社して約半年がたち、「ものづくり」に携わるようになってものを作るときは、工場だけでできているのではないことを肌で感じた。ものができるまでには、人とのつながりや情報など外からでは見えないことがたくさんある。「ものづくり」に実際ふれてみて今までには見えなかった部分を見られてとてもおもしろいと感じた。今後はもっと奥深く「ものづくり」に関わっていきたいと思う。

<参考ウェブサイト>
1)フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 ものづくり

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%82%8A

このページの先頭へ