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ホウ・レン・ソウ

第5回産業論文コンクール 努力賞
住江織物(株)奈良事業所 大黒 徹平さん

会社で仕事に必要な能力とはなんだろうか。
私が就職活動中に良く考えたことの一つである。学生の時、大学で研究することが一つの仕事だと私は考えていた。研究をし、得られた結果を先生に見てもらい自分の意見を報告する。そして、この結果で先生が企業と打ち合わせをする。一連の流れの中で自分の仕事の役割が理解できたので、やりがいを持って研究に打ち込めていた。また、社会に出てからの仕事も、今の研究の延長だと考えていた。
入社して現在の部署に配属後数日がたったとき、グループリーダーが「この本を読んでおきなさい」と一冊の本を貸してくださった。そのとき、私は繊維の会社なので繊維関連の参考書かと思ったが、予想とは違い貸していただいた本は”頭を使ったホウ・レン・ソウ”で報告・連絡・相談といった会社で働く時に必要なコミュニケーションのとり方に関する本であった。一瞬、なぜこの本なのだろうと困惑した。私は人とコミュニケーションをとるのがはっきり言って苦手である。配属されてから、グループでそんなにコミュニケーションが取れていなかったのかと思い、このとき正直気持ちが沈んだ。
事実、そのころ私はグループに馴染めていたとは言いがたい。研修後、はじめての職場環境で、グループ内でどうやって仕事が回っているかわからないだけでなく、専門用語や覚えないといけない検査方法など、入ってくる情報量多すぎて全く余裕がなくなっていた。そのせいで、一度聞いたことを何度も確認しないといけない悪循環に落ちいり、頼まれた仕事もきちんとこなせていない部分があった。そんな中、グループ内で自分から進んでコミュニケーションをとることが億劫になっていた。今思うと、グループリーダーはそうなることを察して、仕事の基本についての”ホウ・レン・ソウ”に関するこの本を読むようにと渡してくださったのだと思う。
“頭を使ったホウ・レン・ソウ”の中で、ホウ・レン・ソウは組織の血液として述べられている。”ホウ・レン・ソウ”とは、報告・連絡・相談を短縮した言葉であり、上下間、関係者間のコミュニケーションを密に計るという意味である。会社は、複数の人間が集まって共同で作業するところであり、上司と部下間、関連する部署間の連携プレーが不可欠であり、その基本を成すものが報告・連絡・相談である。私はこのときこの基本が欠けていたのだ。
「仕事をスムーズにこなしたい」、「上司の信頼を得たい」、「チームワークを円滑にしたい」どれもまず、報告・連絡・相談をきちんと行うことが重要である。”ホウ・レン・ソウ”ただ行うのではなく、(1)タイミングを逸しない、(2)正しく伝える、(3)簡潔に伝える、(4)事実情報と意見・憶測情報は分ける、(5)まずいことこそ早く伝える、(6)話すことは事前に整理して臨む、(7)内容が複数ある場合は優先順位をつける、(8)問われることを前提に臨む、(9)こまめなホウ・レン・ソウを心掛ける、(10)確実性を期すことは忘れずに後刻確認する、の10のポイントが必要であり、この”ホウ・レン・ソウ”を行うことで、問題点を見つけ、その課題への対応を考え、次のステップへ進むことができる。私はこのときただ何も考えずに”ホウ・レン・ソウ”をしていたのだ。つまり、情報を整理し、任せてもらった仕事の中で何ができていないのかを明らかにして、どう対応すべきなのかについてうまく”ホウ・レン・ソウ”出来ていなかったのだ。この本を読んで、自分の問題点について初めて気づいた。また、このときから、情報を整理し、自分の問題点についてきちんとまとめることを心がけるようにした。

 配属先での仕事が始まり、約2ヶ月がたった。まだ、この”ホウ・レン・ソウ”が十分出来るようになった訳ではない。在学中は、”ホウ・レン・ソウ”の重要性など考えたこともなかった。会社と大学との違いは、なによりもまず組織の一員として仕事しなければいけないということである。この経験を通して、組織の一人として”ホウ・レン・ソウ”がいかに重要か身にしみてわかった気がする。また、会社での仕事に必要な能力について少し実感できた。”ホウ・レン・ソウ”を行う視点でものを考えることで、以前よりもきちんとこなせる仕事は増えてきている。また、ちゃんと仕事をこなせることが自分の自信にもつながり、これに仕事のやりがいを感じられるようになってきた。社会に出て日は浅いが、これからもっと仕事にやりがいを見出せるように頑張りたいと思う。

〈参考文献〉

「頭を使ったホウ・レン・ソウ」 今井繁之

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