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製造業のグローバル社会

第7回産業論文コンクール 努力賞
ニッタ(株) 齊藤 謙介さん

1.近年の製造業の動向

グローバル社会、世界市場。今日よく耳にする言葉である。製造業にもこの言葉は近年強く言われていることである。

実際に私が買った商品などでも、自分では気にせずに購入したものがタグを見てみれば、中国製、ベトナム製であった。ということが多々ある。それほど、日本にも海外のものが入ってきているのである。これには、これまで売れていた日本製品が海外の格安ノーブランド製品に押されているということを意味していることにもなる。この現象は昔、日本が製造業で気を吐いていた時代にアメリカ、ヨーロッパで、日本製品が出回っていた現象である。現在は、それが逆の立場となって起こっている。モノづくりの現場は労働力の安いアジアへと移行しているのである。そして、さらにアジア各国では、労働力だけでなく自国でも技術力を確立し、すべてを行うようになってきている。よく注目されているのが中国である。中国という巨大な市場と圧倒的なエネルギーを持つ国に対して日本の製造業はどのように考えていくべきなのであろうか?

2.日本の技術力とその特色

現段階では中国の技術力が日本に並んだとは、考える人は少ないかもしれない。日本が長年積み上げてきた技術力は簡単なものではない。しかし、中国はどのようにしてこの差を埋めてきているのであろうか?ある講演で聞いた話では、製造業としての考えに違いがあるということを聞いた。品質を高めるためのアプローチ方法である。中国企業では品質を高める対策としては最先端の機械を莫大な出資で購入し、品質を高める。一方、日本は、今あるものをノウハウでお金をかけずにどうにかする。原因はもちろんコスト面ではある。しかし、日本がこれまで、ものづくりを成長させた根源がここにあるのではないかと思う。モノで解決するのではなく、技術力で解決する。これが、日本らしさ、日本品質と呼ばれるが所以ではないだろうか。

3.日本という素晴らしい技術環境

日本は海外の力に押されている。という風に考えてしまうことがある。しかし、日本は現在でも全世界の産業用ロボットの60%、工作機械の30%、金型機械の40%を供給する技術大国なのである。近年、韓国の電化製品の売り上げが伸びているが、実際、その製品に使われる重要な部品は日本製なのである。つまり、高い品質と高機能を持つ製品については、まだ日本に海外が頼っているということを示している。今の状態を築き上げた先輩方とともに仕事ができる環境。そのなかには、他にはまねできないという貴重なノウハウが埋もれているのだ。私たちはこのような環境で仕事ができている事を決して無駄にせずに吸収していかなければならない。

4.今後の製造業の目指すあり方

これまで、途上国を呼ばれていた国々が製造業に力を注いできた現在。世界的に製造業でトップを走っていた日本が、その地位を追いやられているのは、当然のことである。また、これらの国々と日本などの先進国には製造業としてのスタートが異なるということも考えなくてはならない。日本をはじめとする先進国は、まず自国での売上を伸ばすことから成功を収めている。しかし、近年伸びている国はスタートから、海外へ売ることを目的としている。つまり、日本は一度成功を収めた方法とは別な考えを持っていかなければならない。一度成功したものを変えるというものは、なかなか難しいものである。さらに日本品質というものも守っていかなければ、世界での差別化ができなくなってしまう。
日本が海外との差別化の武器になるものは、「コスト」「機能」それ以上に「信頼」というものであると考えている。「日本の製造業=信頼性」という現在でもある程度確立している。しかし「コスト削減」を掲げている企業が多く、難しい問題ではあるが、コスト競争で失ってはいけないものであると強く思う。「安く、よい製品を」ではなく「よい製品を安く」という品質を前提とした考えをなくしてはならない。我々の世代は、常に世界を意識して考えることが必要条件となっていくであろう。そのためには、世界が今、何を求めているのかを把握しなければならない。中国という国が強くなった理由は、豊富な労働力と資源というものが大きく関わっている。しかし、日本にはそのような力は強いとは言えない。つまり、日本単体では、これから生き残ることは難しいのではないかと思う。生き残っていくためには、いかに他国との連携を深めるかということにある。それには、製品のみならず、それぞれの文化、風習から学んでいかなければならないのではないだろうか。他国が連携したいと思うような日本製造業にしていかなければならない。互いが必要とされる関係を築くことが重要である。この関係を築きながら、先人達の作り上げた日本品質を守っていくことこそが今後の日本の製造業を前進させる鍵となるものであると感じている。

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