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「なぜ」を考える力

第7回産業論文コンクール 優秀賞
(株)呉竹 阿形 遥子さん

入社から、5ヵ月が経ちました。新しい環境で、社会人という今までとは違った立場で仕事をしていくということで、入社前から内定者研修で社会人としての心得をたくさん教えていただきました。その中でも私が特に意識しているのが、「なぜ」を追求していくということです。「なぜ」を追求していくことにより、物事を論理的に考えること、つまり「ロジカル・シンキング」が身に着くとされています。このロジカル・シンキングによって、仕事をする上でどのような効果があるのか、実体験を基に述べさせていただきます。
1.仕事の全体像を把握することができる
新入社員研修を終え、6月に総務部に配属されてからは、先輩方からの仕事の引継ぎが始まりました。毎日必死にメモをとり、帰宅後は何時間もかけてそれをノートにまとめる日々が続き、いつの間にか私は仕事の「方法」を覚えることだけに集中してしまっていました。ただ仕事の上辺をわかっただけで、根本的な部分を理解できていなかったのです。そんな時、はやくも来年に入社予定の内定者が決定し、事前研修に来ることになりました。その事を聞いた時、「あと1年も経たないうちに、私も後輩に引き継ぐ立場になるんだ。」という実感が急に湧き、このままの仕事の仕方ではとても後輩に説明なんてできない、という不安に襲われました。わかった「つもり」になっていること、方法を覚えただけになってしまっていること、そういったことを全て根本から理解をする必要があると強く感じました。
そこからは、自分の中で「なぜ」を繰り返すことを意識しました。「なぜ、この仕事が必要なのか」、「この仕事にはどのような意味があるのだろうか」ということを意識し、わからない時は積極的に先輩方に質問をするようにしました。すると、この業務が会社運営の上でどのような意味を持っているのかがわかり、少しずつ会社の動きの全体像が見えてくるようになりました。「なぜ」を追求するということは、仕事の「流れ」を理解することに繋がっていたのです。全体像が見えてくるようになると、自分も会社の一員として、会社のためになっているのだということを感じることができるようになり、同時に、以前より仕事に対する責任感も強くなっていきました。会社運営において、自分1人で完結するような仕事は一切なく、自分が担当する仕事は「点」であっても、会社というものはその点が繋がり合って、「線」となって動いているのだということがわかるようになりました。
時には、根本的なことであればあるほど、質問をすることが恥ずかしいと感じてしまいます。しかし、それをそのままにしておくといつか必ず困る時がきます。また、わかったふりをしている期間が長ければ長いほど、質問はしにくくなります。仕事の意味や流れをできるだけ早く理解し、視野を会社全体、社会全体に広げていくためにも、わからないことはすぐに質問し、「なぜ」を追求していくことが、新入社員として必要不可欠なことであると私は考えています。
2.言葉に説得力が増す
ロジカル・シンキングを用いると、説得力を高めた説明やプレゼンをすることができます。それは、「なぜ」を追求することで、その事柄の根拠がわかるようになるからです。
その事を初めて実感したのは、配属後すぐに、「新しいラミネーターを購入するために、1番良いものを探すように。」という仕事を任された時のことです。今まで物を買うにあたってそこまで深く考えたことがなかったので、正直、「そんな細かいところを気にしなくてもあまり変わらないのではないか。」という思いが頭をよぎりました。しかし、会社でものを購入するときは必ず上司からの承認が必要となります。会社の経費を使うということは、それほど責任が重いことなのだということを感じました。そこで、私は承認をもらうために、ネットや雑誌で様々な種類のラミネーターの比較に取り組みました。1番安いものはどれか、温めるのにかかる時間が1番短いものはどれか、持ち運びが1番しやすいものはどれか、火災防止の機能がついているものはどれか…考えられる全ての項目について比較をし、最終的に1点に絞り込みました。
商品を絞ったら、次は上司への説明です。説得力を高める説明方法として、新入社員研修に際に教わったことを思い出し、以下の3点を意識しました。(1)結論を明確にする、(2)理由づけを明確にする、(3)理由づけに対して、証拠・データをつける、ということです。(1)と(2)は他商品と比較したことで達成されていたので、あとは(3)を達成するために、商品データなどをコピーし、自分が選んだものが他のものより優れているという理由が目に見える形にしました。以上の準備をして初めて、上司から購入の承認を得ることができたのです。
物の購入に関すること以外でも、仕事をする中で上司に説明をしなければならない場面はたくさんあります。その際に、自分が出した結論について、再度自分で「なぜ」を追求し、整理することで、ロジカル・シンキングを用いた説得力のある説明・プレゼンができるようになると思われます。
3.仕事の改善策、失敗の回避策を考えることができる
入社してから5カ月、最初はモチベーションも高く、何があっても前向きに頑張ろうという気持ちでいたものの、毎日失敗の連続で、はやくも「自分はこの仕事に向いていないのではないか。」と落ち込む日もありました。そんな時に支えとなったのは、上司からの「最初は失敗をして当たり前。大事なのは、同じ失敗を2度しないこと。」という言葉です。では、どのようにすれば同じ失敗を繰り返さずに済むのか、その際にも、「なぜ」を追求することが必要となってくるのです。
総務部に配属されて、最初にぶつかった壁は、電話対応です。特に、外部からかかってくる電話については、うまく対応ができず、また相手の会社名を聞きとれないまま上司に引継ぎをしてしまうこともあり、とても迷惑をかけてしまっていました。そのうち、電話が鳴る度に、また失敗したらどうしようと不安になるようになっていました。このままではだめだと思い、改善策を考えるためにも、まずはなぜうまく対応ができないのかということを考えてみることにしました。そこでまず、言葉遣いに慣れていない、ということが浮かびました。普段遣い慣れていない敬語と、自分の社名・部署がまだすんなりと言うことができていなかったのです。そこで、私は「はい、株式会社呉竹、総務部の阿形でございます。」や、「申し訳ございません、○○はただいま席を外しております。」といった、よく電話で使うような例文や遣い慣れていない言葉を付箋に書き、電話の横に貼るようにしました。また、初めて聞く社名ばかりで混乱してしまい、うまくメモがとれないという課題に対しては、よく電話のある社名のリストを50音順で作り、最初の何文字かをメモしておけば、そのリストと照らし合わせて相手先がわかるようにする、という改善策を考えました。この2つを実行することにより、落ち着いて電話対応をすることができるようになりました。
このことから言えることは、自分の失敗や苦手なことに対しても、「なぜ」を考えていくことが打開策につながるということです。「なぜ、できないのだろう。」と考えることで、まずその原因が明らかになります。そして次のステップとして、「どうしたらできるようになるのだろう。」と考えることで、その改善策を見つけることができるのです。

以上のように、「なぜ」を考えることは、仕事を広い視野で理解し、業務の質をあげていくためにも欠かせないものだと実感しています。今はまだ気持ちに余裕がなく、早く仕事の「量」をこなせるようになりたいという焦りから、方法を覚えるだけになってしまっていたり、失敗をしてしまっても、その場しのぎの対応をしてしまっていることが、無意識のうちにあるかもしれません。しかし、そんな時こそ少し立ち止り、落ち着いて「なぜ」を考えることが必要だと思うのです。それが、結果的には仕事の本質を理解するための1番の近道だと私は考えています。


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