ホーム産業論文コンクール過去の入賞論文第21回産業論文コンクール(令和7年度)自分の職に自信を持つには

自分の職に自信を持つには

第21回産業論文コンクール   努力賞
 共同精版印刷株式会社   吉田泉美 氏 
 『  自分の職に自信を持つには  』

 

社会人2年目を迎え、現在の部署に配属されて約1年が経った。

私の配属部署は営業部内の企画部で、デザインをしたり、コンペティションの際にプレゼンを担当するなど、デザインのみを担当するDTPオペレーターと営業職との中間のような部署である。昔からモノづくりが好きで、イラストやデザインに興味のある私には、非常にありがたい部署への配属だった。

大学は芸術大学でグラフィックデザインを専攻していた。在学時、自分だけの雑誌を制作する授業があった。データ制作から印刷(コピー機で出力)、製本を行い、完成した現物を手にした時の感動は忘れられない。この感動を届ける側になりたい。そう思って印刷会社を志望した。

入社1年目、約半年間の研修期間を経て本配属になった際、私はようやくデザインができるのだと期待に胸を躍らせていた。しかし、私が大学で学んだことは社会には通用しないとすぐに気づいた。

配属されて間もない頃、私が制作したデザインを上司にお見せした際に、「デザインの4つの基本原則は知っている?」と問われた。私はデザインに基本原則があることすら知らなかった。デザイン学科を卒業していながら、デザインの基本のきの字も知らないような状態だったのだ。

仕事ではillustratorというソフトを用いてデザインを制作することが多い。illustratorは大学生時代に悪戦苦闘しながら学んだものだ。機能が多すぎて、分からないことはネットで調べては実践を繰り返し、試行錯誤しながら、4年生の頃には私が作業する上で必要なスキルは身に付けることができた。唯一、社会に出て助かったのはそれだけだった。

まず、デザインには4つの基本原則があると知った。

1つ、近接。目的は構造化。関連する要素をグループ化することで自動的に構造ができ、読者に読まれる可能性が高くなる。

2つ、整列。ページ上の全ての要素を意識的に配置することで、より強くしっかりとした構成単位が生まれ、ページ上で個々の要素が離れていても、統一されているように見せることが出来る。

3つ、反復。デザイン的な決まりごとを作品全体を通して繰り返すことで、全体に統一感を出すことが出来る。

4つ、コントラスト。異なる内容の要素は違いをはっきりさせることで、情報がどのように組み立てられているか読者にすぐにわかるようにすることが出来る。

といったものだ。(参照:ノンデザイナーズ・デザインブック)

この4つの基本原則を守ることで、やっと基礎の土台ができる。

上司はよく「セオリー」という言葉を使われる。セオリーとは「原理」であり、物事の根本となる法則である。

私が制作したものを見ていただいた際に、「こっちがセオリーだからこうした方が良い」と言われることが多々ある。初め、私はそんなにセオリーから外れてはいけないものなのか?と考えていたが、基本の土台がしっかりと確立されているからこそ、そこに遊び心が加わっても見る側には気持ちよく整ったデザインに見えるのだと思うようになった。

先ほど述べた、4つの基本原則が掲載されている「ノンデザイナーズ・デザインブック」という本は、デザイナーではないが、社内などでデザイン要素のあるものを担当することになった人に向けた冊子であり、上司が貸して下さったものだ。

あまりにも無知な自分が情けなかった。自分が学んできた4年間は何だったのかと落ち込んだ。同時にデザインは感覚的なものではなく、論理に基づいて成り立つものだと気づいた。私がそれまでしてきた「デザインもどき」は、なんとなくやそれっぽいものを組み合わせたもので、デザインではなかったのだと痛感した。自分がこれほど無知であったことを痛感すると、自分がデザインしたものを上司や先輩方に見てもらうことが不安にもなった。しかし、落ち込んでいるだけでは何も変わらない。知らないことが怖いならば、知って理解を深めることで地道に自信をつけていくしかない。

私がこれからデザイナーとして自信をつけていくにはどうすれば良いか。

まずはデザインの基本を、自分の中の基本として取り入れることが第一歩だ。

私は上司が貸してくださった「ノンデザイナーズ・デザインブック」を頼りに、4つの基本原則を何度も読み返した。まずは本の内容に忠実に、4つの基本原則を守って要素を配置をしてみた。一見簡単そうに見えて、実際にやってみると難しいと感じた。どのくらい項目同士を近づけて良いのか、どことどこがグループ化できるのか、4つを守ることが今でも難しいと感じる。デザイン制作をする際に、どう配置すれば良いか分からなくなれば、手を止めて本に向かい合った。

少し経つと、本を見なくても4つの基本原則を意識してデザインをできるようになってきた。それでも上司にデザインを確認いただく際には基本原則がなっていないと指摘をもらうこともあるし、DTPオペレーターの先輩方が制作されたデザインと比べると自分の素人ぶりがよく分かる。

特に文字を扱うことは難しい。タイトル、小見出し、本文など、それぞれの文字のサイズや字間の詰め具合によって印象が変わる。タイトルと本文の文字サイズのジャンプ率をどのくらい差をつけるかで、読み手の目を引くか、ただ文字が並んでいるだけのものになるか、デザインを生かすも殺すもデザイナーの手にかかっているのだと思うと、どうしても文字を生かすデザインがしたいと思う。

文字を扱うことは2年目になった今も好きだけれど苦手な分野だ。苦手というのは、自分が文字を扱うことに自信がない。今でもどう処理すれば良いか分からなくなっては本に向かい、それでも分からなければ上司に質問をする。

私には知識も経験も少ない。知識や経験を、得るには時間が必要だ。今後、積極的に仕事に取り組み、本や上司の教えに加え、経験を通して得意な分野にしていきたいと思う。

デザインはそれっぽいだけではいけない。配置する物事の優先順位を考え、全体の構成を考えていく必要がある。

以前、上司にこれから目指していく専門職を聞かれたことがある。私は自信がなく、何も答えることができなかった。

しかし、地道に小さくでも学び続けていくことで、いつか胸を張ってデザイナーです。と言えるようになりたい。そしてデザインの基本を土台に、学びと経験を重ねながら、信頼されるデザイナーとして、会社に貢献していきたい。