ホーム産業論文コンクール過去の入賞論文第21回産業論文コンクール(令和7年度)私が思う社会人の在り方

私が思う社会人の在り方

第21回産業論文コンクール   優良賞
 SUMINOE株式会社 奈良事業所  三浦明日香 氏 
 『 私が思う社会人の在り方 』

 

私がSUMINOE株式会社に入社し、開発部門に配属されてから気づけば四か月が経った。まだまだ分からないことがたくさんあり、目の前の業務をこなすことで精一杯な日々である。長らく学生の身であった私も社会人となり、環境や人間関係、精神的にも大きな変化があり、目指したい社会人像というものを考えるようになった。それは、「信頼される社会人になる」ということだ。そこで本稿では、学生から社会人になって感じた変化を踏まえ、これからの企業や仕事の姿、そして理想とする社会人像に近づくために必要な要素について私なりの方向性を述べていきたい。

私は上記で述べたことを考えるとき、三つの視点が重要だと感じている。それは「責任の重さ」「目的意識」「自由の幅」である。学生から社会人へと立場が変わった今、この三つは私自身が実際に経験を通じて大きな差を実感してきた要素でもある。では、この三つの視点について順に述べていく。

第一に、「責任の重さ」だ。学生時代にもグループでの学生実験や研究室での発表、アルバイトなど、責任が伴う場面はあった。しかし、それらはあくまで自分自身の学びの一環であり、失敗してもどこかに許される余地があった。仮に失敗しても困るのは主に自分自身であって、誰かの信頼や利益を大きく損なうようなことは少なかった。だが、社会に出てからは違う。私の行動や言葉、判断は会社の顔として見られ、社外に対しては個人ではなく組織の一員として扱われる。たとえ些細なミスでも取引先との信頼関係に影響があったり、書類一枚の提出の遅れがチーム全体の進行を遅らせたりすることもある。今はまだ自分だけのテーマや案件が与えられているわけではないが、いずれは自分自身のテーマを持ち、自分が主体となって取り組んでいく業務が増えていくことになるだろう。そのときが来たら、私の行動や判断は会社の一員として見られているのだということを念頭に置き、目の前の業務に誠実に向き合っていきたいと思う。

第二に、「目的意識」である。学生のころは学ぶことが主な目的だったが、社会人は成果を生み出すことが目的になる。この違いは私が思っていた以上に大きかった。大学の研究室では、「なぜそうなるのか?」という問いに対して自由に考え、追究していくことが研究の中心だった。ところが今は違う。研究開発の目的は、「市場におけるニーズに応え、利益を生み出すこと」だ。つまり、おもしろいから、知的好奇心が刺激されるからだけで自分のテーマとして業務を遂行できるわけではない。また、事業を通じて利益を追求するのが会社だ。そのため、これまで学問として行っていた研究ではなく、社会が求める価値とは何か?顧客にとって本当に必要な機能とは何か?それらを考えながら研究を進めるというスタイルに自分の脳を切り替え、慣れるのに時間がかかった。実際に、社内会議での質疑応答の場面で、研究や技術の内容を掘り下げる質問よりもコストや利益などに関する質問や製品として量産可能なのかというような内容の質問がたくさん飛び交うのを目にしたときに、学生であった自分が社会人という未知の世界に飛び込んだのだという実感が湧いてきた。つまり、社会における研究というものは「使える」かどうかが判断の基準になるのだ。研究目的の軸が、“真理の探究”から“価値の創出”へと変わった瞬間、私はようやく学生と社会人の境界線を意識するようになった。

第三に、「自由の幅」である。学生時代にも締め切りや課題はあったが、自分で研究の方向性を選び、制約があまりない中で進め方を決めることが多かった。一方、社会人になると、組織の方針や納期、予算、人員といった「現実の制約」の中で動く。自分の思うようにだけは進められないからこそグループ内での協力や戦略的な判断が求められる。一見すると自由は減ったように思えるが、実際にはその制約があるからこそ工夫の余地が生まれるとも感じる。今の部署に配属後、私は割り振られた仕事を漠然とこなしていたのだが、先輩社員の方々を見ていると様々な業務や研究テーマを同時並行で進めておられる方ばかりであることに気づいた。しかし、納期や予算などの制限の中であろうと「これも確かめてみたらおもしろそう」「この薬剤試してみようかな」といった好奇心や自由なアイデアを種にして試行錯誤を繰り返しながら進めていくことにはこれまでと変わりはないのだと感じた。つまり、「現実の制約 」がある中でも積極的に自分の考えを発信し、周囲との連携をうまく取りながらそれを形にしていくということが重要であり、時間やお金などの制約を工夫して解決していくという意識にシフトしていくことが大切だと考える。

以上のように、責任の重さ、目的意識、自由の幅という三つの視点から、学生から社会人へ移行して感じた変化を述べてきた。私はこれら三つの視点を通じて、企業で働くということは単なる知識やスキルの提供にとどまらないのだと実感している。それは、責任を背負いながら目的を意識し、限られた自由の中で工夫を積み重ねていく営みである。そしてこの営みこそが、会社を通じて社会に価値を生み出す原動力になるのだ。だからこそ私は冒頭で記述した通り、「信頼される社会人」を目指したいと考える。つまり、責任を恐れるのではなく、むしろそれを引き受けることで周囲の人から頼られる存在になるということである。目的を見失わず、顧客や社会にとって価値ある成果を出すことを常に意識していきたい。そして自由の幅が小さくとも、その制約を逆に力に変え、自分なりの工夫を積み重ねていきたい。

これからの企業や仕事に必要なのは、変化の中でも柔軟に学び続け、信頼を築きながら成果を出す人材だと思う。私自身もまだ社会人として歩み始めたばかりだが、経験を重ねることで一歩ずつその姿に近づきたい。そして、いつかは次の世代の新入社員から頼れる先輩だと思ってもらえるような社会人になりたいと考える。