医薬品業界で働く社会人として
第21回産業論文コンクール 優秀賞
佐藤薬品工業株式会社 黒木颯斗 氏
『 医薬品業界で働く社会人として 』
社会に出て医薬品業界で働くようになり、企業に求められる責任や、仕事の本質について日々考えられるようになった。医薬品という人の命に関わる製品に携わる以上、その社会的責任は極めて大きい。だからこそ私は、これからの企業や仕事の在り方を考える際に、「信頼」「働き方」「学び続ける姿勢」の3つが、何より重要なキーワードになると考えている。
まず、最も根本にあるのが「信頼」である。私たちが扱う製品は、患者さんの命や生活の質に直接影響するものであり、一度でも信頼を損なえば、その回復には長い時間と大きなコストがかかる。過去には業界内で品質不正やデータ改ざんといった問題が表面化し、業界全体への信頼が大きく揺らいだこともあった。これらの出来事から学んだのは、たとえ短絡的な成果が得られるとしても、誠実でない行動は必ずどこかで代償を払うことになるということだ。
信頼を築くには、社員ひとりひとりの倫理観と日々の行動が何よりも大切である。私は日常の業務において、「正確な情報を丁寧に伝える」「曖昧な点を曖昧なままにしない」「見えないところでも正しい判断をする」といった当たり前のことを当たり前にしている。企業全体で透明性を高める努力を続けるとともに、現場の社員の意識と行動が一致してこそ、本当の信頼を築かれるのだと思う。
次に「働き方の多様性と変化への適応」について触れたい。新型コロナウイルスの感染拡大を機に、リモートワークやハイブリッド勤務が一気に広がった。研究・開発・製造の現場でもデジタルツールの活用が進んでいる。人によってはテレワークと出社を組み合わせた働き方を経験し、「どこで働くか」よりも「どのように価値を生むか」が重視される時代になったと実感したことだろう。
一方で自由度が高まるほど、自律的な仕事の進め方が求められるようになったとも感じる。これまではオフィスでのやり取りや上司の目がある中で自然と共有されていた情報も、今では意識して取りに行く必要がある。またメンバー同士の信頼関係や心理的安全性を保つには、対話やフォローの質が今まで以上に重要になる。柔軟な働き方は、単なる制度や環境の問題ではなく、企業と社員の相互理解と信頼のもとに初めて機能するものなのだと思う。
そして最後に強調したいのが「学び続ける姿勢」である。医薬品業界は科学技術の進歩が非常に早く、数年前の常識がすぐに過去のものになる世界である。新薬開発、治験手法、医療制度、規制、デジタル技術など、どの分野をとっても学びを止めればすぐに取り残されてしまうだろう。
しかし、「学び」は単なる知識の蓄積ではないと感じている。重要なのは、学んだことを自分の仕事にどう活かすか、そして周囲とどう共有するかという視点である。自分一人で知識を抱え込むのではなく、チームや組織にとっての「共有の財産」として活用する姿勢が求められる。さらに言えば、学び続けることそのものが、企業や社会への責任を果たすための「誠実な行為」だともいえるのではないだろうか。
これからの企業や仕事は、技術や制度が進化するだけでなく、人としての在り方や姿勢がますます問われる時代になっていく。信頼を築くこと、柔軟な働き方を支えること、そしてつねに学び続けること、これは一見バラバラな要素に見えて、実は深くつながっている。そしてこの根底には、「社会にとって本当に価値のある存在でありたい」という企業・個人双方の意思があるべきだと私は思う。
医薬品業界で働く一人の社会人として、私自身が信頼を生み出す存在であり続けたい。変化の激しい時代だからこそ、自分の働き方や考え方を常に見直し、学び、行動していくことが、これからの企業や仕事に対する私の責任であり希望でもある。
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